品質コストを実務観点で考察してみる
今回は「品質コスト」について考えてみます。「品質コスト」はプロジェクトマネジメントでも重要な考え方です。
みなさんも多かれ少なかれ「品質コスト」について意識しながらプロジェクトマネジメントをしていることと思います。しかし「品質コスト」とは何か、を明確に理解されているでしょうか。管理人も曖昧なままプロマネしていました。
品質コストとは
品質コスト(COQ:Cost Of Quority)という用語自体は、PMBOKオリジナルの言葉ではありません。もともと国際標準化機構(ISO)で使用している用語です。それでは、PMBOKから引用してみます。
プロダクトのライフサイクルを通して、要求事項への不適合を予防すること、要求事項への適合のためにプロダクトやサービスを評価すること、および要求事項を満たさない不良のために、投資するコスト
品質コストを構成する種類
品質コストはその内容によりいくつかに分解されます。
- 適合コスト
- 予防コスト
- 評価コスト
- 不適合コスト
- 不良コスト
- 内部
- 外部
- 不良コスト
それでは、一つずつ見ていきましょう。
適合コスト
予防コスト
特定のプロジェクトのプロダクト、成果物、またはサービスの品質不良防止に関連するコスト
評価コスト
特定のプロジェクトのプロダクト、成果物、またはサービスの評価、測定、監査、テストに関連するコスト
不適合コスト
不良コスト
プロダクト、成果物、またはサービスがステークホルダーのニーズや期待に適合しないことに関連するコスト。
不良コストは、さらに次のように分類されます。
内部
プロジェクト内部で発見された不良
外部
顧客に渡った後に発見された不良
PMBOKの考え
不適合コストを減らす
PMBOKでは、適合コストに費用かけることで、不適合コストを減らすという考え方をしています。
不適合コストは、テスト工程で発覚した不良や、受け入れ検査で発覚した不良、顧客納品後に発覚した不良などのことです。至極全うな考え方で、管理人も異論はありませんし、みなさんも異論はないことと思います。
これに対して「適合コスト」は、不良の発生を避けるために要するコストという意味です。品質向上に対してのコストと考えればよいでしょう。
コストのトレードオフ
あとは、コストのトレードオフ問題をプロジェクトで解決しなければなりません。
多大なコストをかければ、品質も向上することは間違いないのですが、そうすると、期間・コストともに対費用効果が満たされない場合もあります。
その辺のさじ加減は、母体組織、プロジェクトマネージャやステークホルダー間で調整をする必要があります。
また、PMBOKは業種を問わない標準的な記載をしています。
時折、IT業界向けではないような類の話もありますが、品質コストに関してはおおむね的を射た内容だと感じています。
実務では
システム開発を例に取ると、PMBOKの分類は次のように当てはめられるのではないでしょうか。
適合コスト
予防コスト
ざっくりと言うと「品質向上施策を実施するための工数」です。具体的には次の工程で品質向上を図ることです。
- 設計工程
- 製造工程
品質向上の施策については、みなさんの会社でもいろいろと取り組んでいることと思います。管理人の会社でも、それはもう大変です。
評価コスト
プロジェクト内部で実施する「テスト工程」にかける工数を指します。
不適合コスト
不良コスト
端的に言うと、「発覚した不具合に対応するためのコスト」です。先ほども書きましたが、「内部」と「外部」に分かれます。
内部
プロジェクト内部の「テスト工程」で発生した不良の修正工数。あくまでも「内部」です。顧客からの指摘ではありません。
外部
外部とは「顧客」を指します。顧客にシステムが渡った後、つまり納品後に不具合が発覚すると、大変面倒なことになります。例として以下の内容をあげてみます。
- 顧客の受け入れ検査で発生した不良の修正工数
- 顧客受け入れ後に発生した不良の修正工数
- 本稼動後に発生した不良による損害賠償など
品質は上流工程で確保する
品質というと製造工程以降に特化した向きもありますが、上流工程での品質向上策も非常に重要です。
一般的に言われている品質コストの大小ですが、次のように言われています。
予防コスト(設計・製造工程)< 評価コスト(テスト工程)< 不良コスト(不具合対応)
通常は、不良コストにかかる費用は大変大きな金額になるといわれています。このことはみなさんも感覚的にわかっているのではないでしょうか?
このように見ていくと、予防コストに比重をかけて品質をよくすることが一番コストがかからないことがわかります。そのため、組織を挙げて品質改善に取り組んでいるのではないでしょうか?
特に設計工程よりも上流である「要件定義」での品質向上を高めることが切望されています。
まとめ
品質を向上させることは、確かに単独のプロジェクトだけでは難しいでしょう。
しかし、一人ひとりが品質向上に対する意識を持って取り組むことで、後工程で発生する不良コストを少なくできると考えています。
そのためにもプロジェクトマネージャは、品質コストをしっかりと理解した上で、プロジェクトを推進していきましょう。
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