実務でのWBSとアクティビティ
今回は、WBSとアクティビティについて書いていきます。PMBOKガイドでも重要度が高い用語です。また、WBSは実務でもよく使う言葉です。アクティビティは? あまり使っていないのではありませんか?
管理人も実務で「アクティビティ」という言葉を使ったことがありません。
PMBOKは意味のない用語を覚えさせようというのでしょうか? 管理人の観点ですが、違いと気をつけるべき内容を書いていきます。
WBSとアクティビティについて
WBSとは何か?
ざっくりというと、次のような内容です。
- 成果物を作成するために必要なすべての作業を階層的に表したもの
WBSの最下位層を、ワーク・パッケージと呼びます。
「すべての作業」というところがポイントです。プロジェクト成果物を作成するための、すべての作業が含まれていることが重要です。
アクティビティとは何か?
ざっくりというと、次のような内容です。
- 作業スケジュール、見積もり、監視・コントロールの対象となる作業
ワーク・パッケージを要素分解したものがアクティビティです。ワーク・パッケージを作成するために必要な作業手順が含まれていることが必要です。
そして、アクティビティの結果がワーク・パッケージです。
また、アクティビティは、作業スケジュールの単位であり、また、ボトムアップ見積を行う際の積み上げ単位に使われます。
注意すべきところは、「アクティビティはWBSには含まれない」という点です。
実務ではどのように使っているか?
実務ではどうなのでしょうか?
みなさんも「WBS」は当然のように使っていると思います。管理人も同様です。
「WBSを作成する」ということは、プロジェクトマネジメントをしていく上で必須の作業・考えです。
しかし、「アクティビティ」という言葉は使っていません。PMP試験勉強をするまで、実は管理人も聞いたことがありませんでした。
昔はWBSという言葉は使っていなかった。
そういえば昔は、WBSという言葉は使っていませんでした。20年位前の話ですけど。
PMBOKが世に知られるようになり、プロジェクトマネジメントのデファクトスタンダードになってからは、現場にジャストフィットした用語のひとつになりました。
初めてWBSの文字を目にしたときは、まず呼び方がわかりませんでした。ダブリュービーエスと呼ぶことを知り、日本語訳が「作業分割構成」となっていて妙な感じがしました。
それでも、WBSが何を指しているのか知れば、「ああ、このことを指しているのか」ということは、わかりました。
業界特有のWBSが用意されている
WBSは言葉のとおり「作業の階層化」を意味しているので、成果物を作成するための作業を分解していくと、WBSになります。
「どこまで分割すればよいのか?」については、PMBOKでは特に触れられていないところが悩ましいのですが、PMBOK第6版だと「構成要素の最も低いレベルにあるワーク・パッケージ」が最終ラインのようです。
この最低ラインとはなに? とお思いでしょう。PMBOKでは「テーラリングでその業界にあったWBSを決めましょう」といった内容で説明しています。
PMBOKは業界に特化しない標準ガイドなのでやむを得ないところです。
そのため、各業界ではその業界特有の事情にマッチしたWBSを作成しています。
IT業界では、IPAから出版されている「共通フレーム2013」などがその代表ではないでしょうか?
管理人も通読しました。システム開発における多種多様な項目について詳細に記載されています。
これもガイドブックですが、情報処理技術者試験を受験される方は、この共通フレームをベースに出題される部分もありますので、一読することをお勧めします。
標準WBSが用意されている
さて、業界標準のWBSが用意されているということですが、みなさんの会社でも、組織向けにテーラリングされたWBSが用意されていることと思います。
WBSは会社独自で決めてよいのです。
その会社で選択してた開発手法などによって、作業項目も異なりますから。組織で独自に定義した(テーラリングした)WBSを使うことを義務付けられていたりします。
WBSも詳細化しすぎると、管理が大変ですし、荒いと作業内容がどのように構成されるのかわかりませんね。
この按配が、組織のプロセス資産である、標準WBSで表現されています。
そのため、ほとんどの企業では、開発スタイルなどにより最適化された、会社標準のWBSが作成されていることでしょう。
標準WBSを活用する
正直なところ、プロジェクトマネジメントをしていく上で、WBSをプロジェクト独自で一から作る事はないでしょう。
プロジェクトマネージャ独自の観点で作ること、と同じことです。
なぜなら、その行為は非常に危険だからです。作業項目の抜け・モレはもとより「本当にその内容で正しいのか?」が誰も担保できません。
プロジェクトマネージャが独自で考案したWBSなので、誰もその信憑性がわからないからです。
そのため、組織の標準WBSを元にして、プロジェクト独自の味付けをしてくことが一般的です。管理人もそうしています。
そもそも、会社のプロジェクトマネジメント手順で、使用することを決められていることがほとんどだと思います。
アクティビティは実務で使っていないのか?
さて、WBSを説明してきましたが、アクティビティとはどういうものでしょうか?
たいていの会社は「アクティビティという言葉を使っていないのでは?」と書きました。
しかし、これに該当するものがあります。詳細作業スケジュールです。
成果物を作成するにあたり、成果物を分解(要素分解)していきます。
ある程度の粒度になったところで(ワーク・パッケージ)、作成するのに必要な作業に分解(要素分解)します。
そして、分解した作業を行う資源(通常は人です)を決めます。この間、作業の順序設定や、担当割り当てが発生します。
そうすると、作業スケジュールが作成できます。アクティビティはこの作業のことを指しているのです。
PMBOKと実務の違い
巷で使われているWBSにはアクティビティも含まれていると考えた方が良いでしょう。
しかし、PMBOKではちょっと異なります。
あくまでもWBSは「成果物を要素分解した作業」であり、アクティビティは「ワーク・パッケージを作成するための作業」なのです。きっちり区別しています。
WBSの最小単位であるワーク・パッケージをさらに要素分解したものがアクティビティです。しかし、アクティビティはWBSには含まれません。
この辺が実務と異なる部分です。実務ではそこまで細かく定義していません。WBSをそのまま作業スケジュールとしているケースも多いと思います。
PMBOKはあくまでも机上の空論なのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。PMBOKの理論を腹に落とせば、十分実務に置き換えることは可能だと管理人は考えています。
まとめ
管理人も使用している、組織の標準WBSでは、ワークパッケージとアクティビィティの境目がありません。
無理やり分けることもできますが、実務では、そこまで分ける必要はありません。
PMBOKは重要な概念を示していると思います。しかし、標準ガイドブックなので、あくまでも、学術的に分けた方が管理・設明がしやすくなるためだと管理人は考えています。
しかしながら、PMP試験に合格するためには、覚える必要があります。
覚えた結果が実務に役立たないということはありません。組織の標準WBSの意味・役割を深く読み取りことができるようになります。
それもPMP試験に合格したあとの、大きなメリットではないでしょうか?
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