プロジェクト失敗の原因は曖昧なスコープが一番多い
今回は、スコープという言葉について書いていきます。最近みなさんもよく使われている言葉ではないでしょうか? 何かターゲットを絞り込むような響きですね。
まさに、イメージどおりなのですが、このスコープがあいまいだと、どのようなことになるのでしょうか。
管理人の経験だとプロジェクト失敗の一番の理由です。
スコープとは?
先程は、スコープのイメージを書きましたが、スコープとは何を意味しているのでしょうか? PMBOKガイドから引用します。
プロジェクトが提供するプロダクト、サービス、所産の総体。
また、スコープが指すものは2つ定義されています。簡単ですが以下の通りです。
- プロジェクト・スコープ(規定された特性やフィーチャーをもつプロダクト、サービス、所産を生み出す為に実行する作業)
- プロダクト・スコープ(プロダクト、サービス、所産を特徴付けるフィーチャーや機能)
スコープが確定できれば成功したも同じ
スコープという言葉で定義されるものは、すなわちプロジェクトの成果物です。
この成果物がステークホルダーの要求を満たしていれば、プロジェクトは成功です。
成功の基準は、PMBOKでは、例のベースラインで表現しています。スコープ・コスト・スケジュールの各ベースラインが、ステークホルダーの要求を満たした場合です。(抽象的ですが)
その中でも、ステークホルダーが「一番こだわるところ」はどこだと思いますか?
管理人は「スコープ」だと考えています。ステークホルダーは「顧客」といってもよいでしょう。
スコープを確定できれば、顧客の一番のこだわりを押さえられます。まさに成功プロジェクトです。
逆を言えば、スコープが確定していないプロジェクトは失敗するということです。
しかしスコープの確定ができない
スコープの確定する工程は、プロジェクト初期段階、ITシステム構築でいうと上流工程(要件定義~概要設計)で確定するよう計画しています。
しかし、プロジェクト終盤のテスト工程、特に総合テスト(システムテスト)の段階くらいから、不足している機能や要件、誤認識された機能が噴出してくることが多くなります。
これは、「スコープが確定していない」ということです。
スコープが確定できないと何が問題なのか?
「なぜスコープが?」と思われるでしょう。コストオーバーも問題です。スケジュール遅延も問題です。
いずれも問題なのですが、コストオーバーも、スケジュール遅延も、その原因は何か? というと「スコープの未確定(増大)」が原因なのです。
なぜ、スコープの未確定や増大が原因になるかというと、プロジェクトのゴールが見えなくなるためです。成果物の最終形が見えなくなるといっても良いでしょう。
何を作り終えればプロジェクトが終了するのか、決まらないからです。
決まらないから、スケジュールも立てきれない。当初の想定からずるずる延びていきます。
スケジュールが伸びれば工数(人件費)も余計にかかりますので、コストオーバーになってしまいます。
スコープが増大すると、増えた分の工数をどうするのか、期間をどうするのか、誰が負担するのか、交渉ごとになっていきます。
スコープが決まらない原因
スコープの未確定や増大の原因は多々あります。書いていくと一冊の本になってしまうので、ざっくりと捉えてみます。
原因は次の2つです。
- お客が決められない
- ベンダーが理解できない
ちょっとざっくりしすぎですかね。もちろん複合要因もあるので一概には言えません。
しかし原因は、顧客(ステークホルダー)と、ベンダー側の2つある、ということを理解ください。
顧客が決められない理由
「顧客が決められない」というのは、要件定義・設計工程に参画しているメンバーが、実は決定権がない、現場をよく知らないなどの理由が多く見られます。
参画メンバーがOKと決定したことが、いとも簡単に現場部門からひっくり返されることも多々あります。
ベンダーが理解できない理由
ベンダーが理解できないというのは、まさにそのとおりなのですが、顧客の話が理解できないということです。
理解でいないまま、要件定義・概要設計を行ったために、仕様漏れ、誤認識が多発するということです。
顧客が要件をすべて出し切っていない、話が漏れているなど、ベンダー側だけの責任だけではない場合もありますが。
しかし、業務SEとして、一般的な業務の流れ・特性などを知らないことや、顧客が言ったことをそのまま鵜呑みしただけで、その裏にある内容の広さや深さを考えていなかったなど、管理人もいろいろな出来事を経験しました。
また、顧客から要件を引き出すテクニックも不足しているように感じます。
スコープが決まらないままだと
スコープが未確定だと、そもそも「プロジェクトのゴールが見えない」ということになるので、よくない状態です。当たり前ですが、スコープが決まらないままプロジェクトを進めることもできないので、いよいよ交渉を始めます。
交渉ごとになると、双方の責め合いが始まります。いつも感じるのですが、プロジェクトマネージャとして一番嫌な場面です。
しかし、冷静に分析してみると、ベンダー側の理解不足が多いように感じます。管理人もベンダー側ですので、そんなことは微塵も口にしませんけど。
まとめ
プロジェクトが火を噴く要因の大部分が、この「スコープ未確定」ではないか? と管理人は考えています。そして、このようことにならないように何かできることはないか? といつも考えています。
スコープ未確定の交渉ごとは、本当に神経がすり減ります。ですが、顧客もベンダーもWinWinに持っていくために、プロジェクトマネージャは奮闘しなければなりません。
経験上、スコープ未確定を防ぐために、いくつかの方策は考えています。これは、また別な機会に紹介したいと思います。
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